Phantazuma:視界制御フィルムとペッパーズゴーストを組み合わせた 観賞者の位置によって異なる内容を観られる舞台機構の試作

著者:千葉一磨 中山祐之介 橋田朋子(早稲田大学)

商業演劇や小劇場演劇で活動する団体や役者の多くが集客面で課題を抱えている。映画よりも高価なチケット代を払い、特定の劇場に足を運ぶモチベーションを観客に持ってもらえるような、ライブならではの表現方法を模索する必要がある。そこで、観客の位置によって同じ舞台を見ながら異なる内容を観賞できる舞台機構を制作したものがPHANTAZUMAである。本制作は、見る角度によって透明・不透明が変化する視界制御フィルムを従来のペッパーズ・ゴーストの仕組みと組み合わせる。具体的には、舞台と観客の間に設置した複数の視界制御フィルム付ハーフミラーの角度と、演者が立つ奥の主舞台、ミラーに反射像(ゴースト)を映すための手前のゴースト用舞台それぞれの照明の明るさを制御する。これにより同じ劇場にいる観客はそれぞれの観賞位置に応じて演者とゴーストのどちらか、あるいは両方の3つの異なる出現パターンを観ることができる。

ペッパーズ・ゴーストは幽霊を実体の無い存在と捉え、半透明の像を舞台上に出現させることを目的とした視覚効果である。この効果は 2 つの舞台空間を要し、観客が直接観賞する舞台に対して、黒幕で隠された別の空間が向かい合うように設置されている。通常、観客は透明板を介して主舞台のみを観ているが、ゴースト舞台上に照明が当てられた場合に限り、ゴースト役の役者が透明板に反射し,半透明な姿で主舞台上の役者やセットと重なる。このように、演劇作品では「死」を人間にとっての普遍的なテーマとして描くことを目指し、幽霊といった超常現象を舞台上で表現するため特有の舞台装置や仕掛けが用意される。しかし、従来の古典的な演出手法は原理が明かされているため、超常現象としての驚きが気薄である。そのため、我々は幽霊とは見える人/見えない人が同時に存在し得る点が恐怖を助長させる要因になると考え、それを踏まえて、より超常的に感じる新たな舞台表現方法を制作し、それが観客を劇場へ惹きつける重力になると期待する。

PHANTAZUMAにより、観客は同じ劇場にいたにもかかわらず、終演後も客席の場所によって舞台に対する感想が異なることで、より超常的な現象を表現できると考えた。具体的な舞台装置としては、まず透明板ではなくハーフミラーをペッパーズ・ゴーストに使用することで、照明制御により、演者とゴーストのどちらか,あるいは両方の3パターンを選択的に提示することを可能にする。次に、見る角度によって透明度が変わる視界制御フィルムをハーフミラーに貼り合わせることで、観賞する位置によって主舞台の可視・不可視を変化させる。このようにハーフミラーを用いたペッパーズ・ゴーストと視界制御フィルムを組み合わせることで、主舞台正面の観賞者はゴーストと演者の共存が見られるが、左右の観賞者はゴーストのみが観賞可能になる。さらに、視界制御フィルムが貼られたハーフミラーを回転制御することで、それぞれの位置で観賞できるパターンが変わるため、1 箇所の位置から移動せずに全てのパターンを観賞できる。

近年、舞台鑑賞後にSNSで作品の感想を発信する観客がたくさん現れる中、PHANTAZUMAの導入によって、観客の感想が座席の位置によって異なるため、観劇後にミステリアスな感情を引き立てる。そして、1度観た舞台を別の位置で再度観たくなるような動機付けとなるだろう。まだ、1度も観ていない観客もクチコミを頼りにするが、自分がどの物語を見られるかは劇場に足を運んで初めて目の当たりにする。つまり、舞台演劇が上演中のみならず、観劇の前後の体験に大きな効果をもたらすのである。

ポスター画像(日本語)

Posted by:kazumachiba

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